映画には着物のしぐさが美しい作品が多いのです。
昭和28年、溝口健二監督作品「祇園囃子」を観ました。古い映画は、その時代の風情を垣間見れることが映画の楽しみのひとつでもあります。
「祇園囃子」では、京都の祇園で芸者を生業とする美代春と、その妹分の栄子(美代栄)を軸にして、祇園の花街に生きる芸者の生き様を描いています。
物語の初盤、祇園の古い路地を、荷物を抱えた栄子がさまようシーンからはじまります。
芸姑の世界
栄子は芸者をしていた母親に死なれ、母親の知り合いだった美代春のもとで芸姑として働きたいといってきます。
情に厚い美代春は、栄子を仕込んで舞妓としてデビューさせます。ところが、美代春は役所の神崎、栄子は車両会社の楠田専務に、それぞれを旦那にするよう、お茶屋の女将から勧められます。
しかし、二人はそれを拒んだために窮地に立たされます。
祇園の実力者の女将から睨まれてお座敷がかからない。しかたなく美代春は栄子を守るため、神崎に身を任せる決心をします。
これが戦前だったら、有無をいわさず枕を共にしないといけないでしょうね…。けれども、戦後になると、多少は芸姑さんが意見を通すこともできたようですね。うまくいくかは微妙ですが…。
女がひどい目にあうことの多い溝口健児監督作品にしては、わりとハッピーエンドな終わり方でした。
映画女優の美しい着物しぐさ
美代春の仕草ひとつひとつがとても美しいのです。着物の袖の捌き方とか、帯の解き方、結び方などはもちろん、お座敷でお客あしらいなど、流れるような所作なんです。
美代春の衣装は、袖の後ろ側にも華やかな模様が描かれています。それが動きによってちらりと見える。そのなかなか見えない美しさが見事なんです。
木暮実千代さんの美代春は、大人の芸者の色気、したたかさがあり、それがやわらかな所作であわらされていました。
そして、まだ若い栄子役の若尾文子さんのしぐさは直線的。気持ちで動く10代の女の子という感じでした。
同時期の映画「流れる」でも、着物や着こなしが魅力的で、参考になります。
着物が登場する古い映画、おすすめです。