着物漫画の歴史を自己流に考察してみました。
最近では、日本の装束イラスト集や着物ポーズ描き方本などが出版され、読むだけでなく漫画を描く人にも着物は人気です。
※こちらのイラストは、ほかりさんのAC無料イラストを使わせていただきました。他にもレトロ建築や和のイラストが多数あってすてきです。
ひと昔前の漫画では、中年向けの和装漫画という傾向がありました。それが、今のように着物漫画が増えていったのでしょうか。
そこで、着物好き、漫画好きの私が勝手に「着物漫画の歴史」について考察してみました。
最初は中年女性向けだった着物漫画
物語の中心に「着物」が登場するのが80年代後半~90年代です。ちょうど仕立て済のプレタポルテ着物が流行った時期です。
しかも、着付けは「きっちり」で、着物も贅を尽くしたものばかり。
そのため、漫画の対象年齢も少し高めでした。読者層は時間やお金に少し余裕ができ、着物や着付けに興味のある30代~40代くらいの女性向けで、掲載紙はいわゆるレディースコミックでした。
また、そうした昔の漫画では、主人公はたいてい呉服屋の娘か、お金に余裕があるOL、お茶や舞踊をしている人が多かったのも特徴です。
衣ものがたり(1995年)
名家の奥様が海外に嫁ぐ娘に持たせた100枚の着物。娘は数年後に亡くなってしまうのですが、形見分けに贈った着物が様々は女性たちの恋のきっかけになるお話です。
出てくる着物も贅を尽くした一流品ばかりです。
異国の花守(1997年)
金沢を舞台にしたイギリス人男性と地元女性の恋愛ファンタジー。主人公の雛子の大叔母が茶道師範で、いつも着物を素敵に着こなしています。大叔母さまのアンティーク着物がすてきです。
着物体験エッセイ漫画
さらに、2000年代に入ると着物のエッセイ漫画が登場します。漫画家やイラストレーターが自らの着物体験を綴った漫画が増えてきます。
この頃からカジュアルに着物を着る「ふだん着物」というワードが定着していきます。
あしたも着物日和(2006年)
漫画家・近藤ようこさんの着物体験を綴ったエッセイ漫画。プレタポルテの着物から始まり、仕立ての着物から桐ダンスまで…。どんどんと着物地獄へ落ちていく様子がユーモラスに描かれています。
この着物地獄、不思議なことに落ちた人たちはみんな笑顔なのです。だって着物が好きだから…。
召しませキモノ(2012年)
スタジオクゥのひよさ&うにさによる、着物にまつわる日常を季節ごとに紹介しています。骨董市やお店での着物の買い方、着物で参加する季節の行事体験など、役立つ情報がもりだくさん。
おふたりのイラストがとてもかわいいです。
現在の着物漫画ブームのさきがけ
現在は、若い人向けにさまざまな着物漫画が出版されています。私は、そのさきがけ『チマちゃんの和箪笥』(2012年)じゃないかと思っています。
作者の佐野未央子さんの着物描写が丁寧で美しいですし、これまでの特別な(高い)着物ではない、日常の着物のおしゃれが描写されています。
着物動画ブームの到来
これまで、着付けは家族に教わるか、着付け教室に通うしか方法がありませんでした。
しかし、最近の動画ブームで着付けを動画で学べるようになったので、より気軽で自由な着物ファッションが発展していきました。
最近の漫画では、レースの着物や洋服と着物を合わせたり、「推しコーデ」を楽しむ新しい着物スタイルが描かれています。
※推しコーデとは…キャラクターやアーティストに関連した色やモチーフを身につけるファッションのこと。
和洋折衷フリースタイル漫画
2020年代になると、漫画やアニメの中に着物が登場する機会が増えました。レトロブームや『鬼滅の刃』に登場する和洋折衷スタイルが人気に。
和服な上司がいとおしい(2020年)
着物知識ゼロの会社員・千歳は、とあるきっかけで和装部門のチームに配属されることに。上司の和乃は才色兼備でクールな和服美人。しかし中身は天然でマイペース。着物を通じたほんわかラブコメです。
和乃さんは二部式の着物や、デニム着物など、現代のスタイルをとりいれた和装スタイルを提案しています。
爛漫ドレスコードレス(2021年)
着物初心者の撫子と、着物上級者の響。ふたりが様々な着物トラブルに会いながらも、自分たちの着物スタイルを楽しむ物語。
洋服とのアレンジ、推しコーデでなど、かわいくてためになるファッション満載の漫画です。
まとめ
このように、昔の着物漫画は高い着物を買える、特別な女性たちが主人公でした。
しかし、かつて高級志向だった着物漫画は、今では若い世代がつくる新しいファッションスタイルになっています。
また、ここに紹介した以外にも波津彬子さんの『ふるぎぬや紋様帳』や、『恋せよキモノ乙女』など、着物の歴史やコーディネートが学べる漫画がたくさんあります。
よろしければ読んでみてください。
そして、着物漫画がきっかけとなって、老若男女関わらず、もっと着物を着る人が増えればいいなと切に願います。