漫画家の近藤ようこさんの着物体験がつまった着物エッセイ「あしたも着物日和」。これから着物を始める方も、着物好きさんにもおすすめの本です。
近藤ようこさんの着物との出会は、デパートでのプレタポルテ着物の購入に始まります。
プレタ着物はいわゆる仕立て済の着物で、サイズ調整が難しいものの、手軽に着れる便利な着物です。
その後、マイサイズでの着物のを誂えたり、悉皆屋(しっかいや=着物の直し)で着物の染み抜きや染め直しを経験。
着物仲間との交流、自分好みの着付けなど、着物好きにはたまらない知識と経験が、漫画で読めてしまいます。
げに楽しげな着物地獄
恐ろしいことに、着物は一着買うと、それにあわせた帯が欲しくなるものです。そして、帯を買うとまた、それに合う着物が欲しくなるといった無限ループ。
さらには、小物やアクセサリー、草履まで凝りだすとキリがない…。近藤ようこさんも、着物を収納するため、思い切って桐ダンスを購入します。
ところが、多くなった着物の収納の用に誂えたタンスも、収納に余裕があると、また着物が欲しくなってしまいます。
そして、どんどん着物地獄へ…。
漫画の中でも、何人かの女性が着物の池地獄に落ちている描写があるのですが、なぜだかみんな楽しそうなんです。
そして、いつの間にか近藤さん地震も着物地獄に落ちていたというオチでした。
でも、こんなに楽しい地獄なら、私もはまってみたいです。(もうすでに、はまっている気も…)
近藤ようこさんの着物スタイル
この本が出版された頃は、まだ着付けのスタイルも今ほど自由ではありませんでした。そのため、近藤ようこさんも自分にあった着付けを見つけるまで、試行錯誤をされていました。
着物の世界では、着物の「格」によって、あわせる帯や小物が決まっています。また、季節によって、ルールが違います。しかし、今までの着物ルールに則っていたら、猛暑の昨今は命の危険があります。
衣装と着物
そんな中、近藤ようこさんが出会った本『和服なら、私―デラックス・エレガントな誘惑』。そこには、当時としては画期的なスタイルが提唱されていました。
着物は冠婚葬祭用の「衣装」と、おしゃれ着としての「きもの」に分けて考える。「衣装」はルールに則った着付け、「きもの」はある程度自由に着付けてOKなんです。
私の知り合いの着付け師さんも「人のための着物(衣装)はきっちり、普段の着物は自由でいい」
と、おっしゃっていました。
撮影用の着付け
さらに、この本には近藤さんが着物雑誌の撮影を体験された時の様子が描かれています。
雑誌の着付けは七緒で着付け本を出版されている大久保信子先生。通常はゆったりした着付けを提唱されていますが、実は、撮影用の着付けと普段の着付けはまったくの別物なのです。
こうした、一分のスキもない雑誌の着付けには、ミリ単位での補正と、様々な着付け道具を駆使するのだそうです。