おすすめ着物漫画『チマちゃんの和箪笥』佐野未央子

きもの本感想

『チマちゃんの和箪笥』は、着物がストーリーの中に織り込まれている本格的な着物漫画です。

絵もかわいくて丁寧ですし、着物の描写が自然でとてもきれいなんです。これは、作者の佐野未央子さんが実際に着物を着る方だからでしょう。

これまで、着物を扱った漫画というと、作者の着物体験を描いたエッセイ漫画が主流でした。

一方で着物をストーリーで魅せるのが『チマちゃんの和箪笥』の特徴です。

『チマちゃんの和箪笥』あらすじ

大学生の朝子は、風変わりな「和ノ道倶楽部」という着物サークルに入部を決める。「和ノ道倶楽部」には和風美人の部長と、上品に着物を着こなす男性・光本先輩がいた。朝子は風がわりな部長から「まずは浴衣で過ごしてみて」と突き放されてしまう。

朝子は見よう見まねで浴衣で生活をしはじめてみると、着物が実はいろいろな用途で使え、日本人の生活にあった衣服だということを実感。

着道楽のおばあちゃんから最初の着物(浴衣)と和箪笥を贈られて、ますます着物の魅力にとりつかれ、「ちゃんと着物が着たい」と思うように。

そんな朝子に、部長は「チマ」という名前を与える。これは朝子の中にいる、和の道に導いてくれる「和の童(わらし)」の名前なのだと…。

着物の魅力に目覚めた朝子(チマ)は、大学を卒業後、祖母の住む東北の城下町で、きもの屋「千麻や」をオープンすることに。

季節の着物の楽しみと、お客さんとのエピソード

1話目は、朝子ことチマちゃんが着物の世界に目覚めていくまでが描かれます。その後は「千麻や」を訪れる様々なお客さんと、彼女たちにまつわる着物のお話です。

「千麻や」ではただ着物を売るだけではありません。着付けが上達しない女性に、人形をつかって楽しみながら着付けを教えたり、デート用の浴衣をコーディネートとしたり…。

チマが着物にまつわる女性の悩みも解決していきます。

また、物語に登場するおばあちゃんたちがかっこいいんです。おっとりしつつも審美眼にすぐれたチマのおばあちゃんや、毒舌だけども世話焼きのおばあちゃんたち。

人生の先輩たちの生き様が魅力的なのです。さて、かんじんのチマちゃん本人の恋はというと…

あこがれの先輩との再会

ある日、チマはおばあちゃんを助けてくれた縁で「和ノ道倶楽部」の憧れの人だった、光本先輩に再会します。

実は光本先輩、大企業の御曹司で仕事のため時おりチマの住む街を訪れているのです。しかも、いきなりチマにプロポーズ!

いったいどうして…?先輩と部長はお似合いのカップルだと思っていたのに…。

実はその後、様々な事情が判明するわけなのですが…。

着物の知識以外に恋愛パート充実。読んでいるとワクワク、ほっこりするお話です。

ただ、物語は春から夏にかけてのお話。秋から冬にかけての着物と、その後のチマちゃんの物語が読んでみたいです。ぜひ、続編を…。

着物漫画のパラダイムシフト

『チマちゃんの和箪笥』以前の着物漫画は、着物体験エッセイか、中高年向け漫画でした。

しかし、『チマちゃんの和箪笥』では「ふだん着物」が漫画の中に取り入れられました。これは革新的な作品だったと思います。

この作品以降、カジュアル着物をモチーフにした漫画が増えたように思います。まさに着物漫画のパラダイムシフトだと私は思うのです。

『 鬼宿の庭 』

『チマちゃんの和箪笥』の作者・佐野未央子さんの作品『鬼宿の庭』では、絵師の青年と人外の姫との恋が描かれます。たまゆら姫のおひきずりのお着物が美しいです。こちらもおすすめ。

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